メタバースにスマートフォン、EVはどう進化する? 「CES 2023」で注目すべき5つのポイント

コロナ禍や景気低迷という逆風にも負けず、世界最大級の家電見本市「CES」が2023年も1月5日から開催される。この一大イベントで披露される新技術や製品のなかで、注目すべき5つのトレンドとイノベーションを紹介しよう。
A CES attendee lies on the floor for a metaverse experiences while wearing an Oculus headset.
Photograph: PATRICK T. FALLON/Getty Images

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)によってオンライン開催されていた世界最大級の家電見本市「CES」。2022年に開催地であるラスベガスへと戻り、ハイブリッドな体験を提供するようになった。

この毎年恒例の展示会では、多くの企業がバーチャルで参加し続けることを選択した。「CES 2023」は過去数年のような壮大さを完全に再現することはできないにしても、主催者である米民生技術協会(CTA)は約10万人の参加者を見込んでいる

CES 2023は米国時間の1月5日から8日までラスベガスで開催され、今年もリモートでの参加も可能だ。多くの企業の最高経営責任者(CEO)の頭を悩ませるような経済状況であり、22年は“大失敗”もあったが(NFTを覚えているだろうか)、革新的なハードウェアの発表は引き続き会場で注目されることだろう。

以下にスマートフォンの進化から奇妙なデザインの電気自動車(EV)まで、CES 2023で披露される製品について、注目のポイントを紹介しよう。

1.スマートホームの標準規格「Matter」の進化

メーカーが異なる製品であっても、スマートホームのあらゆる機能が連携して動作するとしたらどうだろうか。Connectivity Standards Alliance(CSA、旧ZigBee Alliance)の新しい規格「Matter」を利用すれば、アップルやグーグル、サムスン、その他のメーカーのスマートホームデバイスをシームレスに連携できる。

これまでは他社製品間で接続できず、特にさまざまなガジェットを組み合わせて使いたいという消費者にとっては包括的なスマートホーム体験の妨げになっていた。

「人々はスマートホームが誕生して以来、すべてのガジェットがシームレスに連携することを大いに期待していました」と、『WIRED』のシニアエディターのマイケル・カロアは説明する。「これまではまったく実現していなかったので、Matterは人々が期待していた相互運用性の実現に向けた次の大きな一歩になると感じています」

Matterは22年11月にリリースされ、すでに300近くの製品が認定を受けている。CES 2023では続報の発表が期待されるところだ。「Matterによって、すでにあるエコシステムやスマートフォン、アプリや音声アシスタントが何であろうと、消費者は自分のニーズに最も適した製品を選べるようになります。スマートホーム機器の購入がもっと簡単になるのです」と、CSAの社長兼CEOであるトビン・リチャードソンはメールで説明している。

現時点でサポートされている分野の一部には、照明や鍵、サーモスタットが挙げられる。CSAは互換性を拡張し、カメラや家電製品、煙探知機など、その他のスマートホームデバイスとも接続できるように開発を進めているところだ。

Matterはスマートホームセキュリティにブロックチェーン技術を利用するという、ユニークなアプローチをとっている。メールにおいてリチャードソンは、「ブロックチェーンを使用したホームネットワーク上の認証情報の認証・保存、デバイス間のメッセージ(コマンド)の暗号化、(クラウドを使わない)ローカル制御の実現、そして容易にセキュリティアップデートを実施できる経路によって、Matterはセキュリティのレベルも高めます」と説明している。安全対策の専門家は、スマートホームが収集したデータを保護する際には、クラウド管理が大きな弱点になると指摘している。

2.メタバースを支えるハードウェアの革新

22年のCESでは、消費者がこれまでになかったような方法で暮らし、働き、遊ぶことができる楽園のようなメタバースの実現に向けた構想が主に注目された。この構想は完全に破棄されたわけではないが、数十億ドル(数千億円)もの損失消費者の導入の遅れマクロ経済の乱高下などが理由で、このコンセプトに対する絶対的な興奮は消えてしまった。

議論の雰囲気は冷めてはいるが、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)、複合現実(MR)デバイスのハードウェアの革新は続くと思われる。

『WIRED』のレビューエディターのジュリアン・チョッカットゥは、スマートグラスのわずらわしさが軽減すればブレイクスルーの瞬間が訪れる可能性があると予想し、次のように語る。「この分野にとって、これが最大の障壁のひとつでした。分厚すぎず、不格好すぎず、重すぎないARグラスを実現するために、部品の小型化や軽量化における進歩を披露する企業も出てくるのではないでしょうか」

3.従来の発想にとらわれないデザインのEV

CES 2023では、一般的なクルマとは異なる外観のEVを数多く目にすることができる。

「EVには燃料タンクや従来の駆動部がなく、バッテリーパックを平らな形状にできるので、車内の床にはわたしたちが長らく見てきたような凹凸がありません」と、『WIRED』シニアエディターのカロアは説明する。「このためデザイナーは、座席の配置から車内エンターテインメントにいたるまで、新たな方法で内装のデザインを考えることができるのです」

あまりに奇抜なアイデアは、すぐに地元の自動車ディーラーで手に入るものではない。それでもコンセプトカーは、5年後や10年後の公道を走っているかもしれないクルマのことを、少しだけ垣間見せてくれる。

4.サステナブルな製品が当たり前になる

リサイクル素材を使ったスマートフォンのケースや電池の不要なテレビのリモコンなど、サステナブルな商品を求める消費者の声の高まりに応じて、企業はこれからも製造過程の見直しを続けるだろう。「製品の製造過程やリサイクル素材、サステナブルな素材の採用を強調する企業がますます増えていますが、これはすべての企業が向かう道のように感じられます」と、『WIRED』レビューエディターのチョッカットゥは語る。

サステナビリティ(持続可能性)というトレンドは、自宅での夜の入浴にも影響をもたらすかもしれない。退廃的な泡風呂はもう終わり。(短時間とはいえ)退廃的なシャワーの登場だ。

「わたしが見てきたなかで不思議だったことのひとつが、パンデミックが始まったころ、誰もがお風呂の話をしていたことです。例えば、コーラーの超高級バスタブが話題でした。いま人々は、サステナビリティや水道料金にさらなる関心を寄せています。つまり、超高級なシャワーをたくさん目にするようになったわけです」と、『WIRED』のシニア・アソシエイト・レビュー・エディターのエイドリアン・ソーは語る。

「先に言っておきたいのですが、2023年には高級なシャワーが流行すると思います。周囲の空気を温める低水圧のシャワーヘッドを設置するのはいいことですよね。ただ、40分もシャワーを浴びるのはやめたほうがいいでしょう」

5.スマートフォンのカメラも引き続き進化

もちろんCES 2023は、真空吸着で壁に貼り付けるワイヤレステレビから、ほんの少しだけ大きくなったゲーミングノートPCまで、新製品の発表が目白押しだ。『WIRED』レビューエディターのチョッカットゥは、肌の状態を検知するアプリのためのデータ収集機能の向上など、スマートフォンのカメラがさらに進化すると予想している。

22年には人工妊娠中絶を認めた1973年の「ロー対ウェイド事件」の判決を覆し、中絶の権利は憲法上のものではないとする最高裁判断が下ったが、「妊娠前、妊娠中、産後すぐの人」のための健康管理機器を発売する企業が現れることも期待されている。さらに、電波がない場所でも安全に過ごしたい人のために、手ごろで簡単に使える衛星対応メッセンジャーが近い時期に普及するという予想もある。

WIRED US/Edit by Daisuke Takimoto)

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